2012年 活動内容

2012年7月14日 14:00-18:00

関東地区研究会報告
会場:桜美林大学四ツ谷キャンパス 4階Y405 (Obirin University Yotsuya campus, 4F, Room Y405)

第一話題提供者:白水繁彦氏(駒澤大学)(Shiramizu Shigehiko, Komazawa University)
発表テーマ:「エスニック・ムーブメント研究:ハワイ沖縄系の事例を中心に」
“Ethnic Movement : a case of Uchinanchu movement in Hawaii”

ハワイには「マルチエスニックハワイ」という前提がある。特に、人的交流や文化接触が進み、様々な局面でのハイブリッド化(=ローカル化)が進行している状態にある。これを多文化融合社会という。
その中で、今回のテーマでもあったオキナワンは、ハワイの日系社会とは別に独立したプレゼンスを確立している。戦前の移民一世、二世は、主流社会と日系社会から二重の差別を受けてきた。しかし80年代に入り、彼らのオキナワンとしてのエスニック・アイデンティティは、それまでの隠されたものから外向きの顕示的なものへと転換した。この頃のアイデンティティ変容の動き、第二次ウチナーンチュ・ムーブメントの主力を担ったのは三世であった。世界中から労働者として移民を受け入れてきた結果多民族社会となったハワイで、日系とは別にオキナワンとしてのプレゼンスを獲得するに至るまでの苦労や努力、エネルギーは想像を超えるものがある。
このように、差別を乗り越え多民族社会ハワイの一員としての地位を築いたオキナワンのようなエスニック集団は他にも存在する。しかし、最も印象的だったのは、こうしたエスニック集団がプレゼンスを高め各自の文化を主張することに対し、先住ハワイ系の反応が非常に消極的であるということだ。つまり、あまりよく思っていない。かつては主役だったはずが、多民族社会ハワイにおける一構成要素という位置づけになってしまったためだ。他のエスニック集団がそれぞれのアイデンティティを確立させ表舞台に登場する一方で、先住ハワイ系は主役落ちしてしまった。
先述したように、現在ハワイでは様々な局面でのローカル化が進行している。そして私は、現在の多文化融合社会ハワイにおけるロコという集団が、ハワイのみならず日本における多文化共生への一つの答えになるのではないかと考えている。また、民族の違いを超えたロコという存在こそが、ハワイが先駆的な多文化社会のモデルである所以なのではないかと思う。しかしながら、「ロコ」と一くくりにしても、それぞれが持つ民族的出自への意識は強く、先に挙げた先住ハワイ系と他のエスニック集団のような問題も存在する。
私が今後「多文化共生」や「多文化主義」をキーワードに考えていく上で、真に多文化が共生する社会とは何か、またそれは実現可能なのか、ということを強く考えさせられた。
(寺門みのり 獨協大学外国語学部英語学科卒)

第二話題提供者:伊藤哲司氏(茨城大学人文学部) (ITO Tetsuji, Ibaraki University)
発表テーマ:「多文化に寄り添う『円卓シネマ』という方法論」
“Round-table-cinema workshop for intercultural understanding”

このセッションは大まかな二部構成になっていた。まずは伊藤氏の研究概要と授業実践についての報告、次は参加者たちによる実際のワークショップ経験であった。
伊藤氏は異文化理解のために「円卓シネマ」ワークショップを提案・実践してきた。「円卓シネマ」が紡ぎだす対話では次のようなことが起こると考えられた。まず題材となる映画には「Life」が描かれているがゆえに、決して浅い話にならない。次に、対話によって、互いの文化・社会的な事柄についての理解が進むことが多い。さらに、「何が解りえないかが解りあえる」というメタレベルでの理解に達することもある。そして対話が次なる対話を喚起するということである。「円卓シネマ」を始めるきっかけになったのは韓国の映画『友へ(チング)』であった。そこに描かれた「友情」に対する解釈や認識において日本人と韓国人の間に違いが存在することに気づき、その違いを対話を通じて理解しようと試みたのである。
ベトナムと日本を結ぶ「円卓シネマ」の授業実践では、短編日本映画『トトオ』を素材に日本人学生、ベトナム人学生、留学生、社会人などが参加、2011年12月と2012年1月に両国で行なわれた。いくつかの成果もあったが、日本人参加者の英語力、通訳者・翻訳者の介入などの問題点や「文化中立型」の素材である『トトオ』を用いて「対話の中で何らかの差異が立ち上がる」という境地まで、いかにしたら到達できるかなどの課題も明らかになった。
後半のワークショップでは、その映画、『トトオ』―1975年(昭和50年)の大阪を舞台に、そこで生活する3人家族のささやかな日常生活を描いている―を観た後、「金魚」の象徴、最後のシーンにおける妻の不在の意味、映画のテーマについて参加者全員の話し合いが行なわれた。
(ペク・ソンス 神田外語大学)


2012年 7月8日 10:00~12:00

中国・四国地区研究会報告
会場: 岡山大学・文化科学系総合研究棟・共同研究室(2階)

表題:大学の多文化化を考える Thinking about multicultural environment in University

話題提供者:中島美奈子(ナカシマミナコ)(NAKASHIMA Minako) 九州大学国際教育センター助教

講師紹介:ご専門は社会心理学・異文化間心理学。現在、学士課程国際コースの仕事に従事しながら、留学生の異文化接触における対人関係の研究を行っている。

話題の概要:近年、国際化に熱心な大学が増えてきた。九州大学も国際化拠点大学として、大学院および学部において英語のみで授業を行い学位が取れる国際コースを開設し、一層の国際化を推進している。大学の国際化として想定され、実施されている取り組みと、課題について紹介して頂いた。そして多文化関係学に携わる者に何ができるのか、何をどう考えていく必要があるのか、手がかりを探っていくため、意見交換を行った。
(岡山大学社会文化科学研究科 田中共子)


2012年 7月8日 16:00-18:00

関西・中部地区研究会報告
場所:龍谷大学大阪梅田キャンパス

テーマ(日本語と英語で):「外交という文化をどう育てるか」

話題提供者:神余隆博氏(関西学院大学副学長、前在ドイツ特命全権大使)

表題:「外交という文化をどう育てるか」(お一人の発表ですので、テーマも標題も同一です。)

プロフィール:大阪大学法学部卒業、1972年外務省入省、スイス・中国・ドイツの各日本大使館勤務ののち、 1989年外務省国際連合局軍縮課長、1991年同国際連合局国連政策課長、1993年大阪大学教授、1996年在ドイツ日本国大使館公使、1999年外務省欧亜局審議官、年同欧州局審議官、2002年在デュッセルドルフ日本国総領事、2005年外務省国際社会協力部長(大使)、2006年国際連合日本政府代表部特命全権大使(次席常駐代表)、2008年在ドイツ特命全権大使、2012年より関西学院大学副学長(国際戦略担当)。教歴として、立命館大学客員教授、大阪大学教授、東京大学客員教授、デュッセルドルフ大学客員教授を歴任、2007年から大阪大学大学院国際公共政策研究科招聘教授でもある。

概要:日本はなぜ、国力に見あった外交が発達しないのであろうか、なぜ欧米は言うに及ばず、中国や韓国などの近隣の国に比べても外交下手なのであろうか。その責めは政治家と外交官だけが負うものではなく、日常生活において交渉や社交を尊重・実践しない国民性と日本の文化的な風土にあるのではないかと思われる。外交文化を日本に根付かせるためには何をしなければならないのか、文化論的側面から日本外交を解剖し、強化のための方策を考える。


2012年3月25日(日) March 25 (Sun)

関東地区研究会報告
場所: 立教大学太刀川会館1階第1会議室

話題提供者(1):角和昌浩氏(昭和シェル石油㈱、東京大学公共政策大学院特任教授)(Masahiro Kakuwa, Showa Shell Sekiyu K.K,, Project Professor of University of Tokyo Graduate School)
発表テーマ:「エネルギー問題への入口」 “Introduction to Energy Issues”

エネルギー供給・消費システムは、石炭・原油など原料としての一次エネルギー、発電所や石油精製所などの転換セクター、電気や石油製品など消費される二次エネルギーのから成り立っている。一次エネルギー・システムと転換セクターは長期的に形成、運用されるため、急激な方向転換は難しい。例えば、あるエネルギーに関する政策が形成されてから実際にプラントが建設され、そのエネルギーが利用され、全エネルギーの1%のシェアを得るのに30年かかると言われている。しかし、二次エネルギーは消費者の意向で変える余地大きい。このことは、昨年の夏に大幅な節電が実施されたことや、消費者の中に節電に関する意識が強くなってきていることからも理解できるであろう。
ところで、陶芸用の窯で使う燃料は、その社会でアクセスが容易な二次エネルギーが使用される。日本も含めた先進国では電気やLNG、中国だったら石炭、バーレーンであれば重油と言った具合である。日本は先進的な燃料を使えるにもかかわらず、日本人には薪焼きの手触り感を愛でる感性がある。このような感性を持つ日本人であれば、311以降の二次エネルギーの選択も良い選択ができるのではなかろうか。
(舘山 丈太郎, JICA)

話題提供者(2):関口礼子氏 (大妻女子大学を経て「日本の社会研究所」開催)(Established,the Japanese Society Research Institute after Otsuma University)
発表テーマ:「カナダにおける多文化主義とその後の変化」“Multiculturalism in Canada and Its Recent Change”

関口氏が多文化主義の研究のために滞在していた1985年頃のカナダは、一言語による一文化であるアメリカ(人種のるつぼだが、英語圏)とは異なり、英語・英国系対仏語・フランス系の英・仏二言語・二文化を共存させる「二文化社会」が中心的な考え方であった。しかしながら、その後、先住民族、ウクライナなどの他のマイノリティの権利主張が相次ぎ、各エスニックグループが共存する「個別的多文化主義」に傾斜し、言語・教育・文化振興についても、グループ毎に予算化される時期が続いた。ただし、2000年頃からは、多文化の個別的併存ではなく、自文化とは異なる「異文化」への理解と寛容が重要であると説く「統一的多文化主義」が台頭し、“building bridge” (異文化との橋渡し)を重視するこの考え方が、カナダでは現在でも主流となっている。
レクチャーの後半では、最新事例としてアルバータ州の“Framework for Student Learning in 2011”が取り上げられ、専門学校と大学入試に必要とされる英語資格の違い、学校の独自性、オンライン教材の浸透状況などが議論された。この新しい学校教育の枠組みで日本がカナダから学ぶべき点として、1.画一的、鵜呑みではない思考、2.一過性の学業でなく、生涯学習・仕事・生活全体の充実、3.社会・テクノロジーの激変への適応意識、4.ローカルとグローバル問題の不可分性の認識だとの解説がなされた。老齢化や人口減少の加速、移民の増大など、これまで以上に多文化共生と異文化への対応が求められる日本にとり、上記指摘は、大学や高等教育という領域のみならず、企業・個人・家族・社会という軸におけるあらゆる文化・生活領域に応用可能な非常に説得力のある実践的ディスクールだと思われる。
(天野 芳彦 慶應義塾大学社会学研究科)


2012年2月27日(土) 14:00~17:15

九州地区研究会報告
場所: 九州大学・伊都キャンパス比文・言文教育研究棟第8ゼミ室

テーマ:外国人「生活者」のための日本語教育と多文化理解教育の現状と課題―福岡の実践から見えてくること―
Current Situation and Problems involving Education for Learning Japanese Language and Understanding Multiculturalism for Foreigners―Focus on Fukuoka―

第一部: 
(1)「地域「生活者」と大学をつなぐ-外国人留学生の家族への日本語教育を通して-」
話題提供者:新井克之(Arai Katsuyuki)、季江静(Jiangjing JI)、緒方尚美(Ogata Naomi)、李秀珍(Lee Soojin)、永嶋洋一(Nagashima Yoichi)(九州大学大学院比較社会文化学府院生「留学生の家族のための日本語教室」実践チーム)・松永典子(Matsunaga Noriko)(九州大学大学院比較社会文化研究院)

(2)「日本文化塾を通して-学生によるキャンパス国際交流の形-」
話題提供者:永嶋洋一(Nagashima Yoichi)(九州大学大学院比較社会文化学府日本社会文化専攻院生)

第二部: 「ホームでもアウェイでもないフェアな場所-生活者として暮らすムスリムのための日本語講座の実践から見えたこと-」
話題提供者:深江新太郎(Fukae Shintaro)、妹川幸代(Imokawa Sachiyo) (共に愛和外語学院、平成23年度文化庁委託事業 「生活者としての」外国人のための日本語教育事業「ムスリムのためのサバイバル日本語」担当講師)

本研究会では、昨年から今年にかけて福岡で実施された外国人「生活者」のための日本語教育の実践報告がなされた。第一部は、九州大学伊都キャンパス周辺に暮らす外国人留学生の家族のための日本語教室と、同大学に通う留学生のニーズに応えるため、学生が主催した日本事情教室の実践報告である。いずれも、近年になって留学生を中心とした外国人「生活者」が増加傾向にある福岡において、従来の手段ではフォローできない学習者に対する一つの試みであった。会場に集まったのは主に日本語学校や大学、地域日本語教室の日本語教育関係者であったためか、その授業内容のより詳しい実態に関する質問、さらに日本語教育の理念に関する質問や議論が飛び交い、予定より大幅に時間を延長することになった。第二部は、現在、福岡に暮らすイスラム教の外国人「生活者」に対する試みである。厳密な戒律に従って暮らす彼らは食材を買うにも難儀する。女性は美容院にも通えず、彼らの子供たちをイスラムの戒律に配慮した学校に通わせる必要がある。豊かな多文化共生社会の実現のためには、彼らが日本の習慣や文化を学ぶと同時に、日本社会のほうにも国際理解教育の必要性がある、という提案がなされた。
日本語学習者やそのニーズが多様化している現況においては、まずは各地域で点在している情報や課題を共有する必要がある。そのために九州大学の学生が立ち上げた任意団体「にほんご楽(たの)しかネットワーク」の設立発表が本研究会においてなされた。今後、福岡地域で産官学の連携が進み、多文化化、多様化していく現実に対して、垣根を超えたさらなる新たな試みが実施されていくことが期待される。
文責:新井克之(九州大学大学院比較社会文化学府院生、にほんご楽(たの)しかネットワーク代表)




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