2014年9月13日(土)九州地区研究会の開催

日時: 2014年9月13日(土曜日) 14:00 ~ 17:00(予定)
場所: 九州大学西新プラザ2階多目的室
〒814-0002 福岡市早良区西新2-16-23
http://www.kyushu-u.ac.jp/university/institution-use/nishijin/infomap.htm

テーマ日常生活の中の見えざる差別・偏見・ステレオタイプ ―他者理解とコミュニケーションの課題を考える―(仮題)

<概要>

九州地区研究会では、多文化関係学会の本年度第13回の年次大会(於:福島)のテーマ(『他者』に対する社会的排除と差別:少数派の視点から考えるアカデミアとメディアの役割と責任)に関連したテーマとして、「日常生活の中の見えざる差別・偏見・ステレオタイプ」というテーマを設定することとした。『他者』に対する社会的排除と差別については、多文化共生社会をめざすという観点から、多文化関係学研究やコミュニケーション研究をはじめ、部落差別史研究、ジェンダー研究、異文化間教育研究など、様々な分野における研究の蓄積がなされてきているものの、「差別」や「人権」の問題を正面から考えるのに対しては抵抗感を抱く人も多い。そこで、今回は「食肉」や「高齢者」をキーワードとして、日常生活のレベルから差別・偏見・ステレオタイプが生じるメカニズムについての理解を深め、他者理解とコミュニケーションを促進する方策を参加者とともに考えたいと思う。

話題1屠畜・解体業生活史へのまなざし―北九州食肉センター企業組合員からの聞き取りを中心に―
講師:李由紀(り ゆき)氏(九州大学大学院比較社会文化学府国際社会文化専攻修士課程2年)

プロフィール:九州大学大学院比較社会文化学府国際社会文化専攻修士課程2年。広島市西区の被差別部落で育つ。幼いころから近所に屠畜場がありホルモン料理もよく食べていた。現在は北九州市を中心とした福岡県内の食肉産業の現場を歩いている。

要旨:私たちが普段スーパーマーケットや精肉店で目にする牛や豚などの食肉は、あらかじめパック詰めにされ、調理しやすいように加工されている。しかしそこに至るまでには当然家畜が食肉へと変えられる、つまり家畜を「屠(ほふ)る」場所・人が存在することを忘れてはならない。生きもののいのちを「屠る」という行為なしには私たちは食肉を手に入れることができないし、自らのいのちをつないでいくことも困難である。日々当たり前のように食肉を口にしてきた私たちは、屠畜場やそこで働く人びとに対してどのような視線を向けてきただろうか。 私のフィールドワーク先である北九州市立食肉センターには、15歳から40年以上この仕事に従事している職人がいる。彼は自らの仕事に誇りを持っているにもかかわらず、周囲にはいまだ隠したままであるという。両親のあとを継いで入ったこの世界で、先輩職人たちの屠畜・解体技術を目で見て盗み、身体に叩き込みながら覚えてきた。その刃捌きはときに神業のようにも思え、毎回私は魅せられる。家畜のいのちにとことん向き合い、家畜が苦しまないよう、そして人間のために与えてくれるものから少しの無駄も出さないよう、丁寧かつすばやく処理していく。私たち消費者は、屠畜場がいのちの連鎖する瞬間に立ち会える場所のひとつであるということを正しく理解する必要がある。北九州市をはじめとし、西南日本では部落差別と屠畜・解体業差別という重層構造の差別状況が存在している。現在も残るそれら諸問題を、彼ら職人たちの生活史を丁寧に聞き取ることから明らかにしたい。

 

話題2高齢者に対する負のステレオタイプ
講師:野中昭彦氏(中村学園大学流通科学部准教授)

プロフィール:コミュニケーション学修士(カンザス大学)、文学博士(西南学院大学)で対人コミュニケーションと異文化間コミュニケーションを学ぶ。近年は、異文化間コミュニケーションとしての世代間コミュニケーションを研究し、介護施設を訪問することで高齢者とのコミュニケーションを調査している。また、メディアが作り出すステレオタイプに関する研究も行う。

要旨:人口に占める高齢者の割合が25%となり超高齢社会を迎えた日本において、高齢者を取り巻く環境は以前とは全く違うものとなりつつある。定年、年金支給年齢、消費税率など社会構造の変化から引き上げられるものもあれば、年金受給額は引き下げられる。悠々自適の老後などは一昔前の話であり、彼らの生活の困窮は老労介護、孤独死といった社会的悲劇を生み出している。核家族化が進む中、介護する家族の負担も増大している。そうした負担を軽減するために、2000年に施行された介護保険制度は、全国にデイサービスやデイケアなどの多くの介護施設を作り出したが、報酬や拘束時間などの待遇の悪さから介護士の不足という新たな問題も同時に生み出した。筆者は5年にわたり高齢者施設を訪問し、介護士たちと高齢者のコミュニケーションを観察してきたが、そこで働く彼らが一人前の介護士として成長する過程において、世話をしているはずの高齢者たちから逆に育てられている姿を間近で見ることができた。人間関係を通して互いに影響しあううちに、俗に考えられる高齢者に対する負のステレオタイプ(例えば気難しい、頑固など)に見られる特徴を乗り越えれば乗り越えるほど、介護士たちは著しく成長した。しかし、これは両者が構築する特殊な人間関係が可能にするのであり、コミュニケーションスタイルとしての安易な一般化はすべきでない。つまり、他の職業に従事する人々には別の接し方が期待されるのである。長く生きている人が持つ特徴と、その世代の人々に適切なコミュニケーションとのせめぎ合いの結果として作られたステレオタイプがどのような影響を与えるかを議論する。

参加費用:無料
研究会後(16時30分~17時)に、懇親会を兼ねた簡単な茶話会を予定しています。
申込み方法:9月12日までに担当者松永典子mnori【アット】scs.kyushu-u.ac.jpまでご連絡ください。
問い合わせ先:九州大学大学院比較社会文化研究院 松永 典子
E-mail:mnori【アット】scs.kyushu-u.ac.jp
TEL:092-802-5629
【アット】を@に変えて送ってください。



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